ダメージの話①
コーチのてつです。
前回のブログに書いた内容の事で色々考えました。
※真面目で大事な話なので長いです。
最近のボクシングで立て続けに起こった事故。
知らない人の為にざっと説明すると、ボクシングの試合で急性硬膜下血腫になり、試合後に意識を失って何名も開頭手術をしています。
この中で、何名か亡くなられました。
これらはプロの試合で、激しいダウン応酬の試合もあれば、そんなに大きなダメージがなさそうな試合もあったみたいです。
驚く事にプロの試合だけではなく、アマチュア選手の練習中もありました。
スパーが終わった後に、意識を失って開頭手術を受けたそうです。
※このアマチュア選手の事故内容↓
39歳の男性で現役を引退していましたが、約10年ぶりの大会出場を目指して今年7月から本格的な練習を再開しています。
この時のスパーリングは3分×3R。
ヘッドギアと大きめのグローブをつけてダウンは全くなく、クリーンヒットもなかったらしいです。
この男性は2008年に軽めの硬膜下血腫が見つかり治療していたことが判明しています。
私見ですが、おそらく過去の硬膜下血腫が原因のような気がしますが、私も医者ではないし、まだ調査結果も出ていないだろうから、これと言うには早いとは思いますが。
これまで、こういった事故は結構あったのかもしれません。
今回あまりにもボクシングで続いたから注目されたからか、もしくは、SNSの発達で情報が得られるようになったからか。
あの俳優の赤井英和さんも開頭手術をうけてボクシングを引退しています。
例えば、この前Yahoo!ニュースの記事に載っていたのですが、ボクシングジムで「人の集まるジム」として紹介されていたジムの会長さんのお兄さんも元プロボクサーで、急性硬膜下血腫となり開頭手術で引退と書いてありました。
今まで結構あった話なのか、それとも本当に最近が多すぎる話なのか、私にはわかりません。
でも、気をつけないといけないと、改めて思い知らされました。
【対人練習・試合の注意事項】を作りましたが、あれはあるキックの団体の規定を元に作っています。
練習中に1回でもダウンしたら、30日は対人練習禁止。
「そんな事言ってたら、試合前に練習が出来ない」
と思いますよね?
私も思いました。
普通のジムなら試合前はスパーを多めにします。
これはボクシング・キックボクシングに限らず、全ての格闘技がそうだと思います。
試合1ヵ月前ぐらいが一番スパーが激しくなるのでは?という感じ。
ダウンで30日間禁止にした場合、もし、試合前のスパーでダウンをしたら試合まで練習が出来ないどころか、試合にも出られない可能性が出てきます。
私も過去はスパーや試合でパタパタ倒れていました。
(↑私は元々倒れやすいです。倒れやすい頭、倒れにくい頭というのは実際あるみたい。)
倒れても、しばらくたってまた普通にスパー。
翌日どころか、そのまま続ける事もありますし。
まわりもそうだったし、それが当たり前の光景。
これが格闘技の現状ではないでしょうか?
(よっぽど記憶が飛ぶようなダウンをしたら、さすがに安静ですが。)
でも、この団体の規定は1回倒れたら30日間禁止。
瞬間的に記憶が飛んだら45日間禁止。
意識消失すれば60日間禁止。
意識消失した場合は、脳神経外科や脳神経内科への受診をし、主治医の指示に従うこと。
と書いてあります。
思ったけど、本来ならこのくらい必要なんだと思います。
私はいつも倒れていたし、プロの試合では記憶がなくなるKO負けもしていますが、病院へ受診した事がありません。
それどころか、記憶が飛んでも1週間後には練習を開始。
一度だけ、左目がズレて斜めに見えるようになった時は受診しましたけど。
たまたま運が良かっただけで、この状態で動きすぎたり、さらに頭を強く打たれたら危険な事だってあったはずです。
ちなみに「急性硬膜下血腫」とは、頭部外傷などが原因で脳や脊髄を覆っている膜と脳の間に出血が起こり、そこに血液がたまることによって脳が圧迫される事。
頭を強く打ったら、大なり小なり脳が出血する事があります。
↓
・脳に強い衝撃が加わり脳挫傷を生じた部位から出血
・脳がほとんど損傷していなくても脳の表面の血管が傷ついて出血
・頭を強くぶつけたときや転んで脳が強く揺さぶられたときに、脳と硬膜をつなぐ静脈が裂けて出血
等々。
だからダウンがなくても、スパーで頭部に強いダメージをくらった後のアルコールは危ないと言われています。
アルコールで血流が良くなって、少しぐらいの出血だった所の血が止まらなくなるから。
血流が良くなる入浴もダメらしいです。
この団体の基準のように、脳のダメージはダウンが一番わかりやすい基準だと思いますが、倒れなくても強く打たれるのも同じ事です。
ボクシングの試合中の事故ですが、試合のダメージというより、練習のスパーでダウンがあったり、ダウンがなくても激しい打ち合いのスパーで、すでに頭部のダメージがかなりあったのかも?と思いました。
スパーで脳が大なり小なり出血しているのに、試合でさらに強く頭をずっと打たれる。
特にプロボクシングはラウンド数が長く、タイトルマッチは10ラウンドとか12ラウンドとか。
考えたらかなり危ない。
今まではこういう事を当たり前にやってきたと思いますが、ボクシングはこれから厳しくなっていくかもしれません。
試合前に頭のCTを撮るとか。
そうなると、選手のダメージによる試合直前キャンセルとか増えるかもしれませんが、本当に安全を考えるならそこまでしないといけないのかもしれません。
今後のボクシング界というより、私達もこのくらいの意識が必要だと思いました。
対人練習中のダウンには細心の注意。
ダウンをしなくても頭を強く多く打たれたら注意。
※下記のような症状が出たら危険信号
・頭痛・吐き気(嘔吐)が強くなる
・ぼんやりしていてなかなか目を覚まさない、あるいはすぐに眠くなる
・ものがハッキリ見えず、二重に見えたりする
・手足が動かなくなったり、しびれが出る
・痙攣(引きつけ)が起こる
・熱がどんどん高くなっていく
そうならないために出来る事といえば、雑に打たずに今まで以上にガードの徹底。
これは今からシャドーでも意識させるし、対人練習中に止めたりして細かく指導していきます。
あとは、実力差があるのに、見えない所からまともに強く打たない事。
ここを気を付けるのはOくんぐらいか。
でも最近はすごく気をつけてくれてるので大丈夫と思います。